今月の言葉

今月の言葉2025年2月「水に源あり 樹に根あり」

2025年2月:「水に源あり 樹に根あり」

 生物学者が面白い実験をしました。砂を入れた小さな四角い箱の中で、水を与えながら一粒のライ麦を育てたのです。4ヶ月後に砂をふるい落とし、ライ麦の根がどれ位張り巡らされているのかを計測しました。その結果、根毛や顕微鏡でしか見えない根の最細部をも含めると、11200キロメートルもの長さになっていたのです。風にそよぐ一本のライ麦がその体を支える為に、やがて実を結ぶ為に1万キロメートル以上もの根を隅々に張り巡らせて、水分や養分を吸い上げていたのです。

 では私たち人間の命を支えているものは何でしょうか。私たちが生きていく為には、食べ物は勿論、空気や水、太陽の光など肉体を支える為のものが必要です。また人間は精神を持った存在ですから、希望、信念、勇気や愛情といった心を支えるものも必要です。そしてまた、人生の中で無常観や無力さを知った時には、しっかりとした宗教も必要になります。

 肉体は父母から戴いた身体です。その身体に前の世からの御縁で人として生まれさせていただいたのです。父と母の肉体的な縁と前の世からの自らの業(行為)によって今、人として誕生させていただいたのです。更にこの業によって次の世に生まれ変わっていくのです。兎にも角にも父母の肉体がなければ今の自分は存在しない事になります。ですから経文には「この義をもっての故に父母の恩重し」と説かれます。更に父母にも又その父母が居られます。遡れば多くのご先祖様がしっかりと生きてくださったからこそ今の自分が居るのです。

咲いた花見て喜ぶならば 咲かせた根元の恩を知れ

 肉体はいずれ無くなります。今この世における人間の寿命は限られているからです。しかし命尽きたらそれで全て終わりではなく、南無阿弥陀佛とお念仏をお称えしたならば、命尽きた後、阿弥陀様にお迎えに来ていただいて必ず西方極楽浄土に往生させていただけるというのがお念仏の御教えです。お念仏を申すという業(行為)によって、次の世は西方極楽浄土に参らせていただけるのです。

 冬になると枯れてしまう植物ですが、実は大地に根を下ろし、コツコツと何万メートルという細い根を張り巡らせて実を付ける為の準備をしています。私たちも命尽きた後には、お浄土に往生させていただくというその実を結ぶ為に、植物がしっかりとした根を張り巡らせているが如く、日々共々にお念仏を申して参りましょう。

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