今月の言葉
2025年7月:「歩みの はやさ それぞれ」
『ウサギとカメ』という寓話があります。足の速いウサギと歩みの遅いカメが競争したところ、足の速いウサギは勝つと過信して途中で居眠りを始めてしまい、その間カメは休む事なく歩き続け、ウサギが目を覚ました時にはカメが先にゴールに辿り着いていたというお話です。過信して思い上がり、自惚れ油断してしまうと物事を逸してしまうという戒めになっています。歩みは遅くとも着実に真っ直ぐ進む事で、最終的には大きな成果を得る事が出来るという教訓です。
仏教は「信仰」と「修行」の二本柱です。浄土宗は「南無阿弥陀佛」とお念仏を申せば、最期臨終の夕べに必ず阿弥陀様に迎えに来ていただき、西方極楽浄土へ往生させていただけるという御教えが「信仰」です。そしてその事を素直に信じ、ひたすら「南無阿弥陀佛」とお念仏を申し続ける事が「修行」です。「信行双修(しんぎょうそうしゅ)」と言われ、「信仰」の「信」と「修行」の「行」との両方を片寄りなく修めるように教化しています。
「信心」についてはたった一度のお念仏で阿弥陀様は必ずお迎えに来てくださると信じ、「行」については一生涯続けて励むべきであると言われます。一生涯続ける事を「念仏相続」と申しますが、何故一生涯お念仏を申し続ける必要があるのでしょうか。それはたった一度のお念仏でも救われるからといって、毎日続けてお念仏を申していなかったら遂には口から「南無阿弥陀佛」のお念仏が出てこなくなり、遂にはお念仏の事すら忘れてしまう様になってしまうからです。ですから一生涯、「南無阿弥陀佛」と申し続けてくださいとお念仏の相続を勧めています。
雨そそぐ 軒の下石 くぼみけり 難きわざとて 思いすてめや
軒下の硬い石であっても何年も絶え間なく雨だれに打たれ続けると窪んでゆきます。何事も休まず怯まず、急がず慌てず、辛抱強く継続して努力する事が大切です。仏道修行も休まず怯まず、急がず慌てず継続していく事が大事です。浄土宗のお念仏は阿弥陀様のお救いを信じて、ただ「南無阿弥陀佛」とお称えするだけの易行です。いつでもどこでも誰にでも出来る易しい修行です。毎日数回、数分でも結構ですので「南無阿弥陀佛」と共々に申し続けて日々過ごして参りましょう。